体験談 / さくら

私が「娘のため」と無理をしてでも習い事の送迎をしていた本当の理由

「もう!早く準備してよ!」 


ダンスレッスンに出かける時間なのに
のんきにパジャマ姿で
おやつを食べている娘に私は怒鳴った。 

(毎週のことなのに
なんで準備万端にしてないの?)

(連れて行ってもらうんだから

もっと気を使えないの?) 


私は苛立ちながらも
毎週娘の習い事を送迎し、見学していた。
見学に間に合うために、仕事も調整したり家事をやりっぱなしの日もあった。 


 
ある日
レッスンに向かう車で娘が突然言った。


「今日は見学しなくていい」 


突然のことで、何を言っているのか理解が出来なかった。
すぐに出た気持ちは、怒りだった。 


(なんでそんなこと言うの!?)

(ママが見てくれていて嬉しいだろう

と思ってたの私だけ!?)

(え、私いなくてもいいの?) 


こんなふうに思っていても頭が混乱して
「なんで?!急すぎ!」
しか言葉に出来なくて、ただ怒るしかなかった。

さらに

「これからはレッスンに一人で電車で行ける

と娘が言うので 


「ちょっと待ってよ!?
私、いいように使われてただけだったの?
用が無くなったら必要ないってこと??」
と反論した。  


「そんなこと思ってない」と冷静な娘に対して
「じゃあ、なんで!?」と、怒り口調の私。

 
すると娘が


「私もう大きいんだよ?見学されるの恥ずかしいんだってば!」

と言った。

その瞬間、頭をハンマーで殴られたみたいに、ショックだった。 





ショックなのに、そのまま伝えられなくて
「恥ずかしいってなに?
私の存在が恥ずかしいってこと!?」
と、さらに怒鳴る私…。 

その後も散々怒鳴り散らしていた私だったが
ちょうどダンススクールに到着したので、
「行ってくる」と吐き捨てながら娘は車を降りた。 


その後、落ち着かないので車を出て街中を歩いたが、イライラがおさまらない。
娘の

「見学しなくていい」

「これからは自分で行く」

の言葉を思い出しては腹がたつ。  


10分ほどあてもなく歩き回っていると、
ふと、、、

「私、何が嫌でこんなに怒ってんだろう…」と、疑問を感じ始めた。


見学出来ないことって、私そんなに困ることかな?
見学しなくて自分で通うなら、送迎もしなくていいし。
私、楽になるじゃん。 


ん??
じゃあ、なにがそんなに嫌なんだ?


見学出来ないことで困ること、私が嫌なこと…
私は何が嫌でこんなに怒ってるのか…  

 
あ~~、そっか。
見学できないと嫌なんだ、私。
だって、娘が褒められるの見れないもんね。


娘が褒められると、まるで自分が褒められたような気持ちだったんだ。 
レッスンに付いて行けば誰かが娘のことを見て「可愛いね」と言ってくれる。
それを聞いて、私は自慢げな気持ちになれた。
まるで私が「可愛いね、すごいね」、って言ってもらってるみたいで。

あれ? もしかして…
可愛いって思われたいのって… 
「私」だったんじゃないの? 

 
そう実感した途端に、涙が溢れて止まらなくなった。 
私、人から「可愛いね」って言われたかったんだよね。
昔から容姿にコンプレックスがあって
親から「可愛いね」って言ってもらった記憶もないし。 

きっと…
私が親にしてほしかったこと、人から言われたかったことを
娘に投影していただけなんだろうなぁ…。


 
そりゃ娘もいい加減怒るよね。
よく今まで文句も言わず付き合ってくれたなぁ。
心の底から、娘に申し訳ない気持ちが出てきた。  

車に戻るとレッスンが終わった娘が待っていた。
「お待たせ~!ちょっと散歩してたよ。さっきはごめんね」
と素直に謝れた。
娘も「うん、私もごめん。あと、いつもありがとう」
と笑顔だった。 

その後、私は見学に行かなくなった。
レッスン着も私が選ぶことはなくなり、髪形をチェックすることもしなくなった。
送迎もしなくなり自分で電車に乗って通っている。

時には娘からお願いされると、送って行くし見学することもある。
 
娘が褒められたら嬉しいし、「えへへ~自慢の娘なの!」と思うけれど
以前のように、自分が褒められた気持ちにならなくなった。


電車で行くようになった娘は
レッスンに間に合うように、自分で時間を調整して準備をしている。  
私は自分の時間が出来たことで、最初はかなり戸惑って何をしたらいいかわからなかった。 

まずは好きなお茶を飲んでみた。
その後、散歩に出かけた。
土手をのんびり歩いていたら、行きたい場所を思いついた。
そうだ、あの本読みたかったんだった。
どんどん、やってみたいことを思い出してきた。 
 
こんな感じで
今では好きなことをして、自分の時間を楽しんでいる。

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さくら

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